化学繊維
薬品による耐性や耐熱温度、また水分の吸収性等に大きな違いがあります。
ナイロン(NY)
用途
- 食品製造
- 各種製造現場
特徴
- ナイロンは、世界初の合成繊維で、もともとはDUPON社の商標名です
- 工業用のブラシの中では使用頻度が高く、代表的なブラシ素材です
- ブラシ素材の中では、最も耐摩耗性・弾力性・回復性に優れています
- 耐アルカリ性で、アルコール類には強いが強酸性には弱いとされています
- 吸水性は、あらゆるブラシ素材の中で最もよいとされています
- 一般的にブラシ素材に用いるナイロンは、6ナイロンになりますが、他に6‐6ナイロン・他に6‐10ナイロン・6‐12ナイロンがあって、これは吸水率の違いによる剛性の差となり、水をかけながらの作業に使われることが多いです
- 波加工が施されたナイロンは、ボリューム感や水含みが求められる際に使用します
- 溶融点215℃で、使用限界110℃以下となります
ナイロン他の素材(画像クリックで拡大)
ポリプロピレン(PP)
用途
- 各種洗浄用
- 各種製造現場
特徴
- ブラシ素材の中では、比重は0.91と最も軽いとされます
- ナイロンと比較すると硬性があるためコシがあります
- ナイロンと比較すると耐摩耗性に劣り、毛先が割れることがあります
- 吸水性がないため、速乾性に優れます
- 吸水性がないため、水をかけながらもコシが必要な場合にも使われます
- 太い線径のものは、かきとるような使い方に適します
- 耐アルカリ性、耐酸性とされています
- 一般溶剤には溶解しません
- 溶融点165℃で、使用限界70℃以下となります
ポリプロピレン他の素材(画像クリックで拡大)
塩化ビニール(PVC)
用途
- 各種洗浄用
特徴
- ナイロンと比較すると硬性があるためコシがあります
- 耐熱性がブラシ素材の中で、著しく劣ります
- 吸水性がないため、速乾性に優れます
- 耐アルカリ性、耐酸性とされています
ポリエステル(PET)
用途
- 各種洗浄用
特徴
- ナイロンと比較すると硬性があるためコシがあります
- 耐熱性がブラシ素材の中で、著しく劣ります
- 比較的硬くて折れやすいため、ブラシ素材としてはあまり使用しません
- 吸水性はほとんどありません
- 耐アルカリ性、耐酸性とされています
- 荷性ソーダに弱いとされています
- 溶融点260℃で、使用限界100℃以下となります
ブラシ化学繊維一覧表
比重 | 工程水分率(吸水性) | 熱の影響(軟化点) | 溶解点 | |
---|---|---|---|---|
ナイロン(NY) | 1.14 | 4.5 | 110℃ | 215 〜 257℃ |
ポリプロピレン(PP) | 0.91 | 0 | 70℃ | 165〜173℃ |
塩化ビニール(PVC) | 1.39 | 0 | 60℃で縮む | 200〜210℃ |
ポリエステル(PET) | 1.38 | 0.4 | 100℃ | 255〜260℃ |
ブラシ化学繊維の耐薬品性
塩酸 | 硫酸 | 硝酸 | 蟻酸 | 苛性ソーダ | 一般溶剤 | |
---|---|---|---|---|---|---|
ナイロン(NY) | × | × | × | × | × | × |
ポリプロピレン(PP) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
塩化ビニール(PVC) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ▲ |
ポリエステル(PET) | ○ | △ | ○ | ○ | × | ○ |
ナイロンとポリプロピレンの早見表
吸水性 | コシ(動線径) | 磨耗性 | 耐熱性 | 対薬品性 | 重量 | |
---|---|---|---|---|---|---|
ナイロン(NY) | ○ | × | ○ | ○ | × | 重 |
ポリプロピレン(PP) | × | ○ | × | × | ○ | 軽 |
化学繊維(研磨剤含有)
ナイロンに研磨剤を含ませたブラシ素材となります。研磨材の含有量や粒子の大小で粗さを自由に選べます。
研磨剤含有ナイロン(炭化ケイ素SiC)
用途
- 研磨・バリ取り作業
特徴
- ナイロンに、研磨剤(酸化けい素)を混合させたブラシ素材です
- 研磨やバリ取りなどに使用されます
- 線径や含有率により粗さが異なります
- 別名グリットとも称されます
- 薬品耐性はナイロンと同じです
- 溶融点257℃で、使用限界110℃以下となります
研磨剤含有ナイロン(酸化アルミナAl2O3)
用途
- 研磨・バリ取り作業
- アルミ製品製造現場
特徴
- ナイロンに研磨剤(酸化アルミナ)を混合させたブラシ素材です
- 研磨やバリ取りなどに使用されます
- 線径や含有率により粗さが異なります
- 別名グリットとも称されます
- 薬品耐性はナイロンと同じです
- 溶融点257℃で、使用限界110℃以下となります
研磨剤含有ナイロン(ダイヤモンド素材)
用途
- 研磨・バリ取り作業
特徴
- ナイロンにダイヤモンド素材を混合させたブラシ素材です
- ダイヤモンド素材が含まれているため、硬い物を研磨する際に使用します
- 研磨やバリ取りなどに使用されます
- 薬品耐性はナイロンと同じです
金属線
使用用途に応じて選択します。特に耐水性(錆対応)や硬度等に注意が必要です。
鋼線(SW)
用途
- 各種製造現場
- 研磨・バリ取り作業
特徴
- 冷間引延により、硬度を出したもので広く工業用ブラシ製品に使用されています
- カーボン量により40C・60C・80Cがあります
- マイナス要因としては、錆が発生したり連続使用すると金属疲労を起こします
ステンレス線(SUS)
用途
- 各種製造現場
- ステンレス・アルミ製品製造現場
特徴
- 鋼線に比べて錆が発生しにくく、折損が少ないです
- 熱にも強いため、高温の中での研磨作業に適しています
- ステンレスやアルミ製品の研磨に用いられます
- 耐アルカリ性、耐酸性とされています
真鍮線(BSW)
用途
- 真鍮製品・銅製品・木製品製造現場
特徴
- 鋼線やステンレス線よりも柔らかく、あたりがソフトです
- 真鍮製品・銅製品・木製品の研磨に適しています
- マイナス要因としては、色が付着することがあります
メッキ線
用途
- 研磨・バリ取り作業
- 研削現場
特徴
- 鋼線をメッキしたもので、強度に優れています
- 研磨力や研削力が優れていて、切損も少ないです
- メッキの方法としては、真鍮や亜鉛などがあります
バンローブ線(BBR)
用途
- 研磨・バリ取り作業
- 研削現場
特徴
- 硬鋼線を真鍮や亜鉛でメッキして数ヨリ加工したブラシ素材です
- 強力な研削力と折損率に優れています
- 傷目は、比較的細かめな仕上がりです
ラッピング
用途
- 各種製造現場
- 特殊研磨作業
特徴
- 硬鋼線を真鍮や亜鉛でメッキして数ヨリ加工し、さらにワイヤーを巻きつけた特殊ブラシ素材です
- 研磨力や研削力に優れていて、折損も少ないです
動物繊維
種類ごとに柔軟性や弾力性が異なります。
馬毛
用途
- 各種製造現場
- 靴・鞄・革製品の艶出し研磨
特徴
- 柔軟性や弾力性があって、静電気も起こりにくいです
- 天然繊維のため太さが一定ではありません
- 天然繊維のため長さに限界がありますが、豚毛・羊毛と比べると長いものがあります
- 毛の太さは根元で太くて毛先が細くなりますが、ブラシ素材としてはこの方向を混ぜ合わせて一定になるようにしています
- ブラシ素材として、幅広く使われています
- 酸性とアルカリ性には弱く、老化現象をおこします
- 耐熱温度は120℃です
豚毛
用途
- 各種製造現場
特徴
- 馬毛よりコシがあります
- 天然繊維のため太さが一定ではありません
- 天然繊維のため長さに限界があり、豚の毛は短いのでブラシにしたときに毛丈が40mmくらいまでしかできません
- 毛の太さは根元で太くて毛先が細くなりますが、ブラシ素材としてはこの方向を混ぜ合わせて一定になるようにしています
- ブラシ素材として幅広く使われています
- 酸性とアルカリ性には弱く、老化現象をおこします
- 馬毛より耐熱性があります
- 耐熱温度は120℃です
山羊毛
用途
- 各種製造現場
特徴
- 馬毛や豚毛より柔らかく、あたりがソフトです
- 天然繊維のため太さが一定ではありません
- 天然繊維のため長さに限界があり、山羊の毛は短いのでブラシにしたときに毛丈が60mmくらいまでしかできません
- 艶出し研磨等に用いられることがあります
- 酸性とアルカリ性には弱く、老化現象をおこします
- 耐熱温度は120℃です
植物繊維
種類ごとに繊維の細かさが異なります。
パキン
用途
- 各種洗浄用
- 各種製造現場
特徴
- タンピコ麻の葉から取った繊維で、白色で剛毛です
- 吸水性に富んでおり、洗浄力や研磨力に優れています
- ぱきぱきとした感じで、アルミや真鍮など相手がやわらかい場合の洗浄や、艶出しに使われます
- 原産地はメキシコです
- アルカリ性や酸性には弱いです
- 耐熱温度は80℃くらいです
パーム
用途
- 亀の子たわし
特徴
- ヤシの実の繊維で水含みがよく、洗浄力に優れています
- 柔らかく、比較的弾力性があります
- 酸性とアルカリ性には弱く、老化現象をおこしますが、アルカリ性には若干強いです
シダ
用途
- デッキブラシ
特徴
- シダから取った繊維です
- 水含みがよく、太くて硬いため清掃用や洗浄用に適している
- 酸性とアルカリ性には弱く、老化現象をおこしますが、アルカリ性には若干強いです
特殊繊維
その他、耐熱性能の極めて高いブラシ素材、導電性のあるブラシ素材など数多く取り揃えております。
コーネックス 耐熱
用途
- 高温での製作作業
特徴
- 耐熱性ナイロンです
- 濃硫酸・濃硝酸・濃塩酸以外には耐薬品性があり、絶縁性もあります
- 溶融点400℃で、使用限界270℃以下となります
ポリフェニレンサルファイド(PPS) 耐熱
用途
- 高温での製作作業
特徴
- 比重は1.35となります
- 吸水性は0.02とほとんど水を吸収しません
- 耐薬品性に優れ、ほとんどの酸・アルカリ・有機溶剤に抵抗があります
- 高温時における耐薬品性能にも優れているとされます
- PPに近い毛コシです
- 約280度の高い融点を持ち、使用限界は約200度となります
サンダーロン 導電性
用途
- 精密機器関係
- コピー機の紙の吐出し口等
特徴
- アクリル繊維に硫化銅を付けた導電性繊維です
- 繊維の線径が非常に細いため、デリケートな電子部品などの帯電除去静電気防止に使われます
- ブラッシング時の静電気の発生を押さえます
- 静電気除去にも効果があります
- 溶融点257℃で、使用限界110℃以下となります
- 電気抵抗値10の-1乗Ω/cmです
モノエイト 導電性
用途
- 精密機器関係
特徴
- ナイロンを主体として、導電性カーボンブラックを配合したブラシ素材です
- 表面はナイロンと同じくツルツルです
- ブラッシング時の静電気の発生を押さえます
- 静電気除去にも効果があります
- 溶融点215℃で、使用限界105℃以下となります
- 電気抵抗値4.9X10の3乗Ω/cm~8.8X10の5乗Ω/cmです